MetaがVR事業を縮小し、AIスマートグラスに注力するというニュースが話題になっています。
「VRはもう終わりなのか?」
そんな声も聞こえてきますが、個人的には必ずしもそうではないと感じています。むしろ、ここに日本独自のチャンスがあるのではないでしょうか。
今回は、「日本ではスマートグラスよりVRに商機がある」という視点で希望的観測を交えてまとめてみました。
Meta社、メタバース部門で10%人員削減
最近(2026年1月)の報道によれば、MetaはVR/メタバース事業のリソースを縮小し、AI搭載の「スマートグラス(AIグラス)」へと注力する戦略に大きく舵を切っています。Reality Labs部門で大規模な人員削減が進んでいるのも、その一環です(※1)。
MetaのAIスマートグラスとは
一言で説明すると「見た目は普通のメガネなのに、中身は超ハイテクな相棒」と言ったところでしょうか。このメガネを使えば、スマホをカバンから出さなくても、目に見える景色をそのまま動画で撮ったり、ハンズフリーで電話や音楽を楽しんだりできます(※2)。
一番のポイントは、メガネの中に「かしこいAI」がいること。 「これ何?」「これ訳して」と話しかけるだけで、見ているものについて教えてくれたり、外国語を翻訳してくれたりと、日常をサポートしてくれます。
- 写真・動画の撮影(POV撮影:自分自身の視点から映像を撮影する手法)
- ライブ配信(FacebookやInstagramへ、グラスの視点から直接ライブ配信)
- ハンズフリー通話とメッセージ送信
- オープンイヤー・オーディオ
- Meta AIによる情報検索(マルチモーダルAI)
- リアルタイム翻訳
- リマインダー・メモ機能
- スマートな操作(音声入力、つるの部分にあるタッチパッドやボタン操作)
果たして日本で流行るか?
このAIスマートグラス、非常に魅力的な、SFのような近未来的なデバイスですが、果たして日本人に受け入れられるでしょうか?日本での普及において「音声入力前提」はかなり大きな壁になると思います。これは、文化・社会的な振る舞いの違いが強く影響しています。
ご存じのとおり、我々日本人は「人前で話す=迷惑・気恥ずかしい」という感覚が身に付いています。そのため、「メガネに向かって話す」という行為は、技術的に可能でも心理的ハードルが非常に高いのではないでしょうか。どうしたって、「独り言を言っている人」にしか見えません。
あくまで私個人の感覚ですが、利用する人がゼロだとは思いませんが、イノベーター(革新者 2.5%)でもほんの一部にとどまり、アーリーアダプター(初期採用者 13.5%)にまでは広がらないと思います(※3)。
VRは「日常」より「没入」に向いている
AIスマートグラスが目指しているのは日常での利用です。
一方、VRゴーグルは基本的に
- 自宅で使う
- 一人、あるいは限られた空間で使う
という前提があります。つまり、静かに・目立たず使うものです。これは、日本の生活スタイルと相性が良いと感じます。
日本でのVRは普及途上
実際には、日本では20代〜50代を対象とした調査で、VRヘッドセットを「持っている」と答えた人は2024年10月の調査で5.8%です(※4)。意外と持っているなという感想を持ちましたが、認知率は比較的高い(概ね60~70%以上)とのことですので、それを考えればまだまだ普及途上です。
アメリカの10代の30%以上がVRヘッドセットを所有(※5)を考えると、日本ではまだまだ伸びる可能性があります。実際に、日本においては特にトレーニング分野でVRは盛んに使われるようになっています(※6)。これが家庭に降りてくる可能性は大きいと思います。
日本のメタバース利用の増加
日本で普及しているメタバースに「VRChat」と「cluster」があります。また、独自のメタバース・プラットフォームとして大阪・関西万博と連動した「バーチャル万博」なども有名です。
VRChat
VRChatはアメリカのVRChat Inc.が運営するメタバースです。日本発ではありませんが、日本国内でも非常に人気が高く、日本語コミュニティが世界的にも大きな存在感を示しています。
国別の詳細な公式統計は公開されていませんが、アクセスデータなどからも日本の比率が高いことが分かります(※7)。
日本の「アバター文化」との相性がよく、日本文化によって育てられたメタバースということができます。この傾向は今後も続き、日本でのユーザーもより多くなると予想されます。
cluster
clusterは、日本のクラスター株式会社が運営する国産メタバースです。日本の行政利用が多いのが特徴です。治安が良く、日本の行政が安心して使えるように設計されたメタバースです。
バーチャル万博
「EXPO 2025 バーチャル万博 ~空飛ぶ夢洲~」は、大阪万博のバーチャル化プロジェクトとして協会が進める公式サービスです。来場者はアバターとしてオンラインで会場を歩ける仕組みになっています。
会期終了に合わせて役割を終える形となりましたが、会場の見た目は大変にリアルな万博に近く、パビリオンの中にはバーチャルを生かした凝った作りで楽しめるものが数多くありました。
動画視聴の没入感
実は私は、AI機能は付いていませんがスマートグラスを持っています。かなり安くなっていたので映画視聴用に購入したのですが、思った以上に目が疲れ、ほとんど使用していません。
けれども、Quest 3 で映画を視聴した場合には、ゴーグルが重いことさえ除けば快適に観ることができます。
なぜスマートグラスは目が疲れやすいのか
スマートグラスは、現実の景色(透過)と目の前に浮かぶ映像(ディスプレイ)を同時に処理させます。つまり目と脳は常に、「現実にピントを合わせる」「映像にもピントを合わせる」という二重の負荷を感じます。
また、120インチの画面がわずか2メートル先に見えます。これは、私が使用している部屋が6畳と狭いせいかもしれませんが、日本の家屋の広さを考えれば普通のことだと思います。そのため、至近距離で大画面を見ることになり、眼精疲労を引き起こします。
なぜ Meta Quest 3 の方が楽なのか
一方、Quest 3 で映画を観るときには、視界は100%仮想空間で、現実との競合がありません。これは映画館で観るのと同じ状態です。
また、VRでは、仮想的に「数メートル先のスクリーン」を作れ、両眼視差が自然です。つまり目は
遠くを見ている感覚で固定できます。
日本でVRが普及する可能性
このように、VRは日本においてこれから普及が加速してくる可能性のある分野です。これを商機ととらえるのが正しいのではないでしょうか。
シャープのVR開発に感じる期待
そんな中で気になるのが、シャープが進めているVR関連の取り組みです。シャープといえば、「高精細ディスプレイ」を得意とするメーカーです。私のような年代には「世界の亀山モデル」がシャープの代名詞でした。そのシャープが開発している軽量のVRゴーグルがあります。
軽量VRゴーグル「Xrostella VR1(クロステラ VR1)」
シャープ が発表したのは、約198gの軽量VRグラス「Xrostella VR1」で、PCやスマホと有線接続して使うヘッドセットです。198gと言ったら、Meta社のQuestシリーズの2/5以下の重量です。https://corporate.jp.sharp/news/251031-b.html
私は、常々VRゴーグルがもっと軽ければどんなによいかと思いながらVRフィットネスをプレイしています。同様の感想を持っているユーザーは多いと思います。ですから、この製品には大きな期待を寄せています。
現在、クラウドファンディング開始の準備中で価格は未定ですが、15万円程度とのうわさが伝わってきます。価格はQuest 3 の倍ですが、首への負担が大幅に軽減されることを考えると大いに迷います。現在、私が使用しているスマホが16万円、PCが25万円なので、これらのデバイスと同様に毎日使うものなので、仮に15万円であれば購入を検討したいと思っています。
日本独自のVR発展(ガラパゴス化)
AIスマートグラスは便利です。 ただ、日本では「誰もが自然に使う」存在になるのは難しいと感じています。Metaが一歩引いた今こそ、 日本らしいVRが育つチャンスなのかもしれません。
(ここで言う「ガラパゴス」とは、世界標準から外れるという意味ではなく、日本の文化や生活に最適化される、という意味で使っています。)
コンテンツの強み
日本にはゲーム向きのコンテンツが豊富にあります。既に「進撃の巨人VR」は販売されています。
Meta公式ストアでは、『進撃の巨人VR: Unbreakable』のユーザー評価が 4.3/5 と高い評価になっています。
軽量で高性能はVRゴーグルの開発
先ほど紹介したシャープの「Xrostella VR1」だけではなく、ソニーでも「PlayStation VR2」を発売しています。こちらはPS4(PS5)に接続する必要がありますが、多くのコンテンツを有しています。
https://www.playstation.com/ja-jp/ps-vr2
最後に
Metaが目指しているAIスマートグラスは、「日常的に使うこと」を前提としたデバイスです。しかし、スマホのテキスト入力が浸透し、音声入力を得意としない日本においては、AIスマートグラスよりもVRゴーグルのような「没入するためのデバイス」の方が受け入れられやすいのではないでしょうか。
VRChat、cluster、さらに、バーチャル万博のような独自開発のメタバースと、日本ではすでに用途ごとにVR/メタバースが根付き始めていることが分かります。
今後、VRゲーム化が可能な豊富なコンテンツもあります。ゲームでなくても、大画面で疲れることなくコンテンツを視聴するという使い方もあります。
シャープやソニーのような日本企業が、「軽量」「高画質」「没入」を徹底的に突き詰めたVRゴーグルを作ることができれば、それは世界標準ではなくても、日本のVRにとっては強みになるかもしれません。ひいては、同じような文化のある国や地域へ広がっていく可能性もあるでしょう。
日本に合った形で進化するVR、つまりガラパゴス化こそが、これからの現実的な道なのではないでしょうか。
※1 「メタ、メタバース部門で10%人員削減 AI端末に経営資源を集中」(日本経済新聞)
「Meta、VR関連ゲームスタジオ3社を閉鎖 人員削減を進め、メタバース投資をAIやウェアラブルへシフト」(IGN JAPAN)
※2 「スマートグラスとは何ですか。AIグラスとの違いは何ですか。」(Meta)
※3 「アーリーアダプターとは?イノベーター理論、成功事例も含めて解説」(macromill)
※4 「Compared to the ownership of home video game consoles (e.g. PlayStation and Nintendo Switch),the ownership rate of VR headset is still low at 5.8%.」(ACORN Japan)
※5 「『VRへの関心』米国の10代は3割がデバイス所有 日本『使ったことない』8割も利用者は満足げ」(Jcast ニュース)
※6 「企業のVR活用の現状と活用事例をご紹介」(biz.mxmobiling)
※7 「第10回 安心・安全なメタバースの実現に関する研究会」(総務省)



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