最近、政治や経済のニュースを見ていると、どうしても拭えない危機感があります。怒りたいわけでも、誰かを責めたいわけでもありません。ただ、「この流れを歓迎してしまって、本当に大丈夫なのだろうか」と感じてしまうのです。
2月8日投票の衆院選では、チームみらい以外の全政党が「消費税減税、あるいは廃止」を公約に掲げています。それだけ、消費税減税を支持する声が大きくなっているということでしょう。
物価高が続き、生活が苦しい。レジで支払う金額が減れば、確かに助かる実感はあります。けれど、その「助かる実感」の裏側で、あまり考えられていないことがあるように思えてなりません。
今回は、VRとはまったく関係ありませんが、この「消費税減税」について、私自身の違和感を書いてみたいと思います。
消費税減税は、富裕層や訪日外国人にも恩恵がある
消費税は、日本国内で買い物をしたすべての人に課される税金です。そのため、減税を行えば、富裕層やインバウンドで日本を訪れた外国人にも、等しく恩恵が及びます。
「食費だけなら影響は小さい」と言う人もいるかもしれません。けれど、豚こま切れ肉と高級すき焼き用牛肉では、減税による金額差は10倍、20倍にもなります。
つまり、高価なものを消費できる人ほど、減税の恩恵は大きくなる。この点は、あまり意識されていないように感じます。
消費税を下げた分は、どこで補うのか
消費税は、日本の財政を支える大きな柱です。税率を下げれば、当然ながら税収は減ります。
大和総研のレポートによると、消費税減税による年間の減税額は、次のように試算されています。(※1)。少なく見積もっても約5兆円にという非常に大きな金額です。
| 消費減税による年間減税額 | |
| 飲食料品(軽減税率対象)の消費税ゼロ | 4.8 兆円 |
| 消費税率5%への一律引き下げ | 15.3 兆円 |
| 消費税の廃止 | 31.4 兆円 |
では、その減った分の財源はどうするのでしょうか。各政党はいくつかの案を示していますが、現実的に見れば、選択肢はほぼ次の二つに限られます。
- 国債を増やし、借金で補う
- 将来、別の税金や社会保険料を引き上げて補う
どちらを選んでも、負担が消えるわけではありません。形を変えて、いずれ私たちのもとに戻ってくるだけです。
「今、楽になること」と「誰が、いつ払うのか」は、切り分けて考える必要があるはずです。
財政への不安は、すでに市場に表れている
こうした財政への懸念は、すでに金融市場にも影響を与えています。
金利には、大きく分けて短期金利と長期金利があります。
- 短期金利:日本銀行が誘導(現在は極めて低い水準)
- 長期金利:10年国債利回りなど、市場で決まる金利
インフレや財政悪化、将来の利上げが警戒されると、長期金利は上昇します。実際、今週初めには、長期金利が約2.27%前後まで上昇し、約27年ぶりの高水準を記録しました。
本来であれば、金利が上がると円高になりやすいものです。しかし今回は、「財政悪化への不安」という性質の悪い金利上昇と受け止められ、円安が進んでいます。そして、円安が進むことで、物価高が進んでいます。
円安の裏で進む株高を、素直に喜べない理由
一方で、日本の株価は好調で、最高値を更新し続けています。
円安によって輸出企業の利益が増え、また、円安で割安に見える日本株を外国人投資家が買っている、そうした理由がよく挙げられます。
けれど、これは必ずしも健全な株高とは言えません。円安と財政不安の上に成り立つ株高を、手放しで喜んでよいのか、疑問が残ります。
日銀が無理をして支えている現実
最近、日本銀行が大量に国債を買い入れているという報道もありました(※1)。これは、長期金利が急激に上がりすぎないよう抑えるためです。
つまり、市場の力だけでは国債を支えきれず、日銀が下から支えているという状況です。
日銀は一方で、「金融を正常化し、金利を上げていく」とも述べています。けれど、金利が上がりすぎると困るため、再び国債を買う。このちぐはぐさは、見ていて正直、とても不安になります。
政治は減税を語り、日銀は正常化を語り、市場は不安を感じて円を売る。
この状態が健全だとは、どうしても思えません。
本当に大切なのは「今」より「未来」
減税は、今の物価高を一時的に和らげるには、とても魅力的な政策です。
喉が渇いているとき、人は今すぐ水を飲みたくなります。でも、それが後から強い渇きを招く「海水」だったら、本当に飲むでしょうか。
本当は、
- 誰に、どれくらい支援が必要なのか
- その財源をどう確保するのか
- 将来世代に無理を押し付けていないか
こうした点を、丁寧に議論する必要があるはずです。「消費税減税」以外の選択肢が、あまりにも軽く扱われているように感じます。
不安を煽りたいわけではない
「日本はもうダメだ」と言いたいわけではありません。ただ、このまま楽な選択だけを重ねていくことには、強い違和感があります。
目先の安心を優先し続けた結果、気がついたときには選択肢がなくなっている――そんな未来だけは、避けたいのです。
「この方向で本当にいいのか」と立ち止まることは、今、とても大切なことだと思います。
最後に
私は政治や経済のプロではありませんし、いずれかの政党に属しているわけでもありません。
ただ、64歳という年齢で、高度成長期に子ども時代を過ごし、バブル期に青春を送り、結婚直後にバブル崩壊を経験し、その後の「失われた30年」の中で子育てをしてきました。
戦後の日本の繁栄と衰退を、生活者として見てきた一人です。
そんな私から見ても、今の円安と株高は、どうしても異常に映ります。日本が、少しずつ悪い方向に向かっているのではないか―― その不安を、整理したくてこの文章を書きました。
決して、政治の議論をしたいわけではありません。ただ、誰かの目に触れて、一緒に考えてくれたら、それで十分だと思っています。
※1 「『飲食料品の消費税ゼロ』『消費税一律 5%』の費用対効果と必要性 消費減税ではなく、給付付き税額控除の導入を進めるべき」(大和総研)
※2 「超長期金利が大幅低下、財務相発言で需給対応期待-日銀オペ増額観測」(Bloomberg)


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